正義なんてものはあの頃の自分になかったはずだ。あったのは、全てを巻き込んででも満たしたかった己の心。
 
――そしてそれは今も、変わらない。




変わらないもの





 その日、高杉は橋の上にいた。笠を深く被り、手には煙管を思っている。彼の姿は中々に目立っていた。

 しかし、橋の上に堂々と座る高杉を、皆軽く一瞥するだけだった。そんな人々を見て、高杉は喉の奥でくくくっ、と笑った。
「ここも平和ボケしちまってんなァ・・・・・・」

 呟いて、再び笑う。誰もがこんな所にかの高杉晋助がいるとは思っていないだろう。
「つまんねェな・・・・・・またなにか起こすか?」


「やめておけ」




 突然掛かった制止の言葉に、高杉は顔を上げた。

 最初は桂かと思ったが、違った。それは、随分長い間見ていない顔だった。

「久しぶりだな、晋助」

か。また珍しいヤツに会うもんだなァ」


 目の前に立っていたのは、黒髪の女だった。だが、彼女がただの女ではない。高杉達と共に天人と戦った、攘夷派の人間だった。


「お前と会うのも何年ぶりだ? 最後に会ったのはいつだったか」

「覚えていない。忘れても大して意味はないだろう」


 ――そうだ、はそういう女だった。彼女は何ものにも捕らわれぬ、自由気ままな生き方をしていた。そういう意味では、高杉と似ているかもしれない。



「クックックッ・・・・・・てめェも相変わらずだ」

「お前もな。桂から聞いた。祭りで騒ぎを起こしたらしいな」

「ああ・・・・・・アレか」

「銀時と会ったことも聞いた。あいつもあいつでわけのわからん生活をしているが、お前よりも数倍マシだ」


 高杉は肩をすくめた。まさか銀時と比べられるとは思わなかったが。


「先にまた何か起こすと言っていたが・・・・・・本気か」

「さァな」

「答えろ」


 強い口調で、。初対面の人間なら彼女をきつい性格だと思うだろうが――生憎、高杉はの性格を知り尽くしていた。


「本当にてめェは変わんねェな・・・・・・」


 誰よりも他人が心配なくせに、は決してそれを表面に出さない。単に口下手なのか、わざと隠しているのか。その両方だと、高杉は思っているが。

 今も、そうだ。心配なら心配だと口に出せばいい。ここまでくると、馬鹿だとしか思えない。

 だが高杉はそんなの性格を気に入っていた。


「退屈で死にそうだ。何かおもしれェことでもあれば、大人しくしててやる」

「おもしろいこと、か?」


 は少し考え込むようにあごに手を当てた。それから何か閃いたのか、しゃがみ込んで高杉と視線を合わせた。


 そのまま、は高杉に口付けた。一瞬重なり合った互いの唇は、すぐにまた離れた。

「――これで、しばらくは退屈せずに済むだろう?」


 は口元に笑みを浮かべた。高杉もにやりと笑うと、彼女を強引に引き寄せ噛み付くように口付けた。

 が何か言おうとしたようだが、聞こえない。人の目など気にせず、高杉は存分に彼女を味わった。







「高、杉・・・・・・」

 疲弊しきった表情で、が呟いた。顔がうっすらと赤くなっている。それが酸欠のせいだけではないと、高杉は分かっていた。ついでに、彼女が何を言いたいのかも。


「てめェから仕掛けてきたんだろうが」


 しれっとして高杉が言う。が睨むが、迫力がない。

「いたぞ! 高杉晋助だ!!」

 大声に、二人は顔を上げた。全身漆黒の服を着た男達が、こちらに向かって走ってくる。――真撰組だ。



「逃がすな! 必ず捕まえろ!」

「指名手配犯が道で堂々といちゃこいてんじゃねェェェェェ!!」

 ――私情を挟みまくった叫びが聞こえたが、その辺は聞き流しておく。

「走るぞ、

「は? ――うわっ」


 高杉はの手首を掴み、人ごみの中を走りぬけた。路地に入り、曲がりくねった道を駆けた。








「・・・・・・何故私まで巻き込まれなければならないんだ」

 どうにか男達をまいた後、不機嫌そうにが言った。彼女は確かに攘夷派の人間だが、過去形だ。今でも反乱を起こそうと企む桂たちとは違う。だからこそ街中を堂々と歩けるのだが。

「あの状況なら間違いなくてめェも捕まったな。わざわざ助けてやったんだ、感謝しろ」

「お前があんなことをするからだろう!」

「あんなことってのはなんだァ? よォ」


 高杉の言葉に、がわずかに顔を赤くする。高杉は喉の奥で笑い、彼女を抱き寄せた。

「てめェは昔から変わんェな・・・・・・・俺が知ってるヤツァ、どいつもこいつも大人しくなっちまった。つまんねェぜ」

「寂しいのか? 一人だけ取り残されて?」

「ハッ、そんな感情持ち合わせてねェ」


 高杉は鼻で笑った。はそんな高杉を見――自分の腕を、そっと彼の背に回した。

「私が、お前の傍にいてやる。桂も、銀時も、坂本も、全員変わったが――私だけは、変わらずにいてやる」

 思いがけない言葉に、不覚にも驚いた表情をしてしまった。はしてやったり、といった顔になる。


「態度がでけェな」

「むしろ感謝してほしいくらいだ」



 は口元を緩ませた。その笑みが癪に触ったので、彼女に上を向かせて自らの口で封じた。


















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あとがき。
 た、高杉さんの口調が分からん・・・・・・・これでいいのか。
 意味不明に走ってるし。エセシリアスバンザイ!!(うわ最悪)
 こんなのでごめんなさい。

 高村 隆   2005.02.23



(ステキな甘い夢ありがとうございますー!!!
も、もももももも萌えーーーー!!!!)