午後になって降り出した雨は、買い物を終えて帰ろうとしてた私の足を止めた。
もしかしたら少し待てば雨は止むのかもしれなかったのだけれど、元来じっとしてるのが苦手な私はビニール袋を振りながらそのまま通りを歩き出した。

すれ違ってく人達が傘の下から訝しげな目を向けてくるけど、気にしない。



「あっめあっめふっれふっれかあさんがーじゃっのめっでおむかえうっれしいなー」
「いや俺あんたの母さんじゃないし」

パシャパシャと足元の水を跳ねながら歩いていると、目の前に人影。
それから、私に絶えず降り注いでいた雨が遮られた。

「いよう、銀時くん。迎えに来てくれたのかい、ありがとう」
「いようじゃねェよ、こんな雨の中傘も差さずに歩くかフツー」
視線を上げると、案の定そこに合ったのは見慣れた天然パーマとやる気のなさそうな目と呆れた表情。

「あーいやーなんか…雨宿りとか性に合わなくて」
意味分かんねェ、と呟いて手に持っていたもう一本の傘を私に差し出す。
自分で差せ、ということだろうか。
「銀時くん銀時くん、私今両手が塞がっているんですが」
「だから?」
「銀時くんの傘に入れてもらいます。相合い傘だね!」
「……はぁ」

すごく疲れたようなため息をされた。幸せ逃げるよ。


「なによう、相合い傘は全国、いや全宇宙のカップルの標準装備でしょう!」
「装備って何だよ装備って。つーか服濡れてんじゃねェか…帰ったらとっとと脱げよ」
「きゃ、銀時くんたら大胆!」

「…付き合い切れねェ…」



そう言いながらも、少しだけ私の方に傘を寄せてくれる。

少しだけ私の歩調に合わせてくれる。




「何笑ってんだよ」

「いいえー別になんでも……ねぇ、銀時くん」


「あん?」



糖分大好きで糖尿病寸前でたまにぶっきらぼうで無愛想、だけど。




「やっぱり私、銀時くんが好きだよ」
今更だけどね、と笑って顔を見上げる。


ふいと背けられた頬が赤いところもまた愛おしい。






ありきたりなロマンス

(ありきたりでもいいじゃない!)





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
反省文。
題名はつじあやのさんの曲から。この人の曲結構好きです。イメージ的に銀さんより(少しだけ)年上ヒロインな感じで。初めての年上ヒロインだ!そしてこれか私の精一杯の甘さです。


080229 緋桃