「この戦は、負ける」







Last Night













戦支度をしながら、幸村様は呟いた。

確かに城内で働く者はおろか 町人の中でもそれが定説だ。

先の戦での講和で城の堀は埋められてしまったし、数の点から見ても明らかにこちらの不利だ。




「しかしだからこそ、今回の戦、俺は命を投げ出して戦うことができる」




命を投げ出して。


これは口上ではない。

私の主人は本当に、この戦で死ぬ気だということはその語気で伝わる。





「俺が死んでも、兄上が東軍にいる限り真田の家は続く」

それでいい、と主人は頷く。



「そなたにも、随分と世話になった。思えば 信州上田から、だな。礼を言う」

幸村様がそう言って目を伏せると、その長いまつげが目に影をつくった。

そして、机の上から一つの文を取り上げた。

「俺の名義で書いた、兄上への手紙だ。内府殿もそなたのような侍女までは殺めまい。ほとぼりが冷めたらこれを持って兄上の元に行け。兄上もそなたには世話になった身、無下にはせぬだろう」



はい、 と言った声は存外、自分にも無感情に聞こえた。









































「旦那、準備できた?」



幸村様がちょうど長く赤い鉢巻きをつけ終えたとき、障子の向こうで猿飛殿の声がした。

「おう、今行くぞ」



私が両手でやっと持てる二槍を片手で軽々と持ち上げ、主は昔と変わらない、だけれども少しだけその年を感じさせるような笑みを私に向けた。


「では、いってくる」

「いってらっしゃいませ。御武運を」


いつもと同じ言葉を交わす。






けれど私にはもう無事を祈り待つことすら許されず、出来る事といえばもう二度と見ることのないであろう主を目に焼き付ける事だけであった。




それから、音もなく涙がこぼれた。














































------------------------------------------------------------------
言い訳。
幸村がかわいくない。
大阪夏の陣出陣前みたいな感じです。てゆか幸村何歳?みたいな。
ウチの幸村の一人称は普通は俺で偉い人の前もしくは武将モード(何それ)のときは某派です。
それと佐助の最期は大阪夏の陣で(幸村を庇って←捏造)討死をプッシュします。
初書きBASARA夢がこんなヤツ…しかも名前変換なし………スミマセン。
テスト勉強中に思いついたネタです。
そのうち消されそうな気がします。
あれ、しかもコレ今年初作品…!(こんなのでいいのか)



070301 緋桃