閉じた覚えの無い目を開けてみると、相変わらず黒しか見えなかった。
……どこですか、ここは。
♯2.
落ち着こう。落ち着け、自分。
こうなった経緯を思い出そう。
…材料が無かったから、晩ご飯をカップラーメンにしようとして、
…それを買うために家を出て、
…その前に本屋に行くかどうしようか悩んで、
それから、
それから、
「あ、デコトラ」
そうだよあの信号無視のデコトラ!!
目の前までそれっぽいものが迫ってきたところまでは覚えてる。
うん?
じゃあ…え?何?私もしかして…もしかすると?
「えーっと…夢オチ希望なんだけど」
『残念だけど、却下』
「マジでか」
『マジマジ』
「…ていうか、誰?」
『ツッコミ遅いな』
突然聞こえてきた声。
聞こえる、というより頭に響く感じ。
そしてその「声」に、私の儚い希望は軽く消されてしまった。
「名乗りもしない人にダメ出しされたくありません。ていうか人なんですか?」
『失礼な、人だ、一応。でも…名前はちょっとなァ…』
「名乗れない理由でもあるんですか?」
『いや…なんか正体隠してたほうがかっこいいじゃん。足長おじさんみたいで』
くだらねー。
『くだらんとか言うな!足長おじさんなめんなよ』
「足長おじさんはなめてませんよ、いい人ですから。
だいたいおじさんはツッコミのダメ出しなんて…あれ、今、私声に出しました?」
『こちとらお前の頭ん中くらいサクッと読めるんだぞコノヤロー』
「ちょっ…!おまっ…!何花も恥らううら若きオトメの頭の中なんて覗いてんだァァァ!!」
『あーもー、話が進まないからちょっと黙ってろこのオタク。お前の脳内ある意味すごいな』
「酷い!」
何、この人。いや、この「声」。
『単刀直入に言うとお前は死んだ』
あ、やっぱり死因はデコトラですか。
『で、俺が暇つぶしにお前を黄泉から連れてきた。以上。質問は受け付けない』
「待て待て、ツッコミどころがありすぎる。とりあえずアンタは何?何でそんな事できるの?」
『まあそんな訳だからお前には俺の暇つぶしになってもらう』
「聞けよ人の話」
『だからお前には異世界に飛んでもらう』
だーかーらー…って今すごい事をさらっと言われた気がするんだけど。
「あのー、異世界?って言いました?」
『ああ、言ったが』
ドリーム…だ。
「いやいやいや無理無理無理。私ドリーム小説のヒロインみたいな真似できないって、かわいくないし」
『大丈夫だ、誰もそんな展開期待してない』
あれ、励まされたはずなのにイラッとするのは何故だろう。
『俺が退屈しないように、頼むぞ?』
「意味分かんねェよマジで!」
「声」は楽しそうに続ける。
『行き先はお前がよーく知ってるところだ。まあせいぜい死なないように』
その「声」が言い終わるや否や、突然強烈な眠気が襲った。
意識がどんどん落ちていく。
ほとんど消えかけた意識の中で、あの「声」の笑い声を聞いた気がした。
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気がついたら名前変換が無かった(080419)